V.保衛軍官及び秘密情報員の選抜と教育

 北朝鮮においては、個人の能力又は知識よりは思想と忠誠心をより重要視し、特に党性と出身成分が優先的に考慮される。

 これにより、保衛軍官及び保衛軍官を補助する秘密情報員の相は、透徹した金日成・金正日主義者であり、事業と生活において欠陥のない者、成長背景と過程が良い者、親姻族問題がない者、将来党と首領に対する背信行為を行う憂慮が全くないと判断される者である。この他、青少年時代の生活選考記録(少年団組織、金日成社会主義青年同盟組織)と活動も綿密に調査される。

1.選抜過程

 保衛軍官候補者は、2年以上士兵生活を行った者の中から選抜される。士兵の中から秘密情報員として働いた者が相当数保衛軍官候補として選抜され、次のような審査過程を経る。(後に説明する秘密情報員も基本的に同じ審査過程を経る。)

 第1に、党の組織系統を通した背景調査である。この過程において調査されるのは、対象者の家族、親戚等の家庭環境、該当政治組織、党組織での活動状況、党組織又は青年組織での本人に対する生活評定書(評価書)を作成させる。このような調査は、本人が全く知らない中で進行する。

 第2に、保衛局での自体審査である。この段階においては、主として保衛局の該当一群が選抜対象者と直接接触し、対象者は、自身が保衛局のために調査されている事実を知ることもあるが、通常何らかの事業ための資格検査を受けている程度のみ認識するだけである。このとき、対象者の思想と忠誠心の程度及び意欲の程度等が調査される。

 第3に、最終試験又は検討段階である。直接任務を与えて活動させてみる過程を反復してみて保衛軍官又は秘密情報員の資質があるかを検討する。この段階が終われば、保衛軍官として養成する成員を選抜し、保衛大学に送り、秘密情報員である場合には、誓約書を受けて登録する。

 誓約書の内容は、概して金日成・金正日に忠誠を誓い、背信しないということ、反党、反革命分子を摘発するために第1線において心身を全て捧げること、秘密情報員という秘密を厳守し、これに違反する場合には、そのいかなる処罰も甘受するということ等である。誓約書の最後に自己の名前を書き、拇印を押す。名前は、本名と共に仮名を書く。秘密情報資料作成時には、必ず仮名を書かなければならない。

2.教育課程

 このように選抜された保衛軍官候補を教育する過程は、次の通りである。1968年までは、保衛軍官を社会安全部傘下の「朝鮮民主主義人民共和国政治大学」において委託養成していたが、その後、人民武力部傘下の「金日成政治大学」に保衛学部を新設して自体養成し、1980年中頃からは、金日成政治大学から保衛学部を分離し、保衛局直属の「保衛大学」を新設した。(保衛大学は、南浦直轄市江西区域に位置している。)このように保衛軍官の教育は、漸次専門化された。保衛大学は、基本班、再職班、研究院等から成る。

 基本班は、選抜された兵士を受け入れ、4年間教育し、中尉又は上尉の軍事称号を与え、大隊級保衛軍官に配置し、再職班は、2年制で大隊級保衛軍官が選抜され、卒業後には連隊以上級単位の部隊における保衛軍官として事業する。研究院は、保衛軍官養成の最高教育課程として2年制であり、「博士院」とも呼ばれる。研究院を卒業すれば、人民軍保衛局及び各軍団保衛局における部署責任者として配置され、一部は、保衛大学の教員として配置されることもある。研究院は、1期に15名程度の卒業生を輩出し、この中から2-3名が教員として配置される。

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最終更新日:2003/05/01

 

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